会社が赤字になると、
「こんな会社でも売れるのだろうか」
と考える経営者は少なくないと思います。
赤字。
利益が出ていない。
場合によっては債務超過。
こうした数字を見ると、
「もうこの会社には価値がないのではないか」
と思ってしまうかもしれません。
でも私は、
赤字だから会社価値がゼロになるとは思っていません。
赤字というのは、あくまで一つの結果です。
私がまず見るのは、
「なぜ赤字になっているのか」
です。
原因が分かっていて直せる赤字なのか。
本業そのものが壊れている赤字なのか。
顧客や売上は残っているのか。
会社に何が積み上がっているのか。
ここによって、会社の見え方は大きく変わると思っています。
今回は、赤字でも会社に価値が残る可能性があると考える7つのポイントを書きます。
1.赤字の原因を説明できるか
まず一番重要なのは、
なぜ赤字なのか
です。
同じ赤字でも、原因は全く違います。
採算の合わない仕事を続けている。
固定費が重い。
仕入条件が悪い。
価格設定が低すぎる。
集客方法が合っていない。
新しい事業への投資を先行させている。
こうした原因が分かっているのであれば、
一つずつ改善できる可能性があります。
私自身、業績が厳しい会社を見る時も、
最初から、
「赤字だからダメだ」
とは考えません。
まず、
どこで利益が消えているのか
を見ます。
反対に怖いのは、
なぜ赤字なのか経営者自身にも分からない。
原因は分かっているが、どうしても直せない。
こういう状態だと思っています。
つまり、
赤字そのものより、「原因が分からないこと」「原因を直せないこと」の方が問題
なのです。
2.一時的な赤字なのか、本業が壊れているのか
赤字にも種類があります。
例えば、
新しい事業を始めた。
新規顧客を獲得するために先行投資している。
人員を先に採用した。
設備投資をした。
こうした理由で一時的に赤字になっている会社があります。
その場合、
先行投資を除いた本業だけを見ると、
実は大きく崩れていないこともあります。
一方で、
商品を売れば売るほど損失が増える。
仕事を取れば取るほど赤字になる。
値上げも難しい。
仕入価格も改善できない。
市場そのものも縮小している。
こうなると状況は違います。
ビジネスモデル自体に問題がある可能性があります。
私は、
赤字会社を見る時には、
単に損益計算書の最終利益を見るのではなく、
「この赤字は直せる赤字なのか」
を考えます。
原因が複数あっても、全部直せるなら可能性はあります。
反対に、
原因が一つしかなくても、
市場そのものがなくなっているのであれば難しい。
重要なのは原因の数ではなく、
その原因を改善できるかどうか
だと思っています。
3.売上と顧客がまだ残っているか
赤字会社を見る時、
私は売上が残っているかも重要だと思っています。
売上があるということは、
まだ商品やサービスを買ってくれる人がいるということです。
顧客がいる。
取引先がいる。
問い合わせがある。
リピートする人がいる。
これは、
ゼロから事業を作る会社とは違います。
利益率に問題があるなら、
価格を見直す。
仕入条件を変える。
商品構成を変える。
固定費を見直す。
販売方法を変える。
売上が残っていれば、
こうした改善策を考える余地があります。
一方、
売上そのものがほとんどなくなっている場合は、
会社を再生するというより、
新規事業をゼロから立ち上げることに近くなってきます。
買い手から見ても、
「この会社を買う意味」が弱くなる可能性があります。
だから私は、
赤字かどうかだけでなく、
「まだ顧客から選ばれている会社なのか」
を見ます。
4.顧客基盤や取引関係が残っているか
顧客名簿にも価値があると思っています。
ただし、
単純に顧客数が多ければいい、
という話ではありません。
重要なのは、
どんな顧客が残っているのか
です。
一度だけ購入して終わる顧客なのか。
何度も利用してくれる顧客なのか。
別の商品も買ってくれる顧客なのか。
長く取引している法人顧客なのか。
例えば、
既存顧客へ別の商品を提案できる。
新しいサービスを紹介できる。
買い手の商品を販売できる。
そうであれば、
買い手にとって顧客基盤そのものが価値になる可能性があります。
会社は赤字でも、
生きている顧客との関係が残っている。
ここに魅力を感じる買い手もいると思います。
会社をゼロから作れば、
顧客との関係もゼロから作らなければなりません。
その時間を短縮できること自体に価値があるからです。
5.認知・信用・仕組みなど、数字に出ないものが残っているか
会社には、
決算書にそのまま載らないものがあります。
認知度。
信用。
取引先との関係。
営業の仕組み。
集客の仕組み。
業務のノウハウ。
会社として積み上げてきた経験。
こうしたものです。
例えば、
今は赤字でも、
市場では一定の認知がある。
顧客から名前を知られている。
長年取引している先がある。
一定の問い合わせが継続している。
こうした会社と、
今日作ったばかりの会社は同じではありません。
認知や信用は、
お金を出せば翌日に完成するものではないからです。
だから私は、
赤字会社を見る時にも、
「この会社は今まで何を積み上げてきたのか」
を見ます。
ただし、
「歴史が長いから価値がある」
というだけでは足りません。
その認知や信用が、
今後も売上につながるのか。
買い手が活用できるものなのか。
そこまで考える必要があると思っています。
6.改善が実際に数字へ出始めているか
会社を再生している途中であれば、
私は、
言葉より数字
が重要だと思っています。
「来年は良くなります」
だけでは、買い手は判断できません。
でも、
粗利率が改善した。
固定費が下がった。
売上が戻り始めた。
顧客数が増えた。
問い合わせが増えた。
赤字幅が縮小している。
こうした事実があれば、
改善途中でも会社の見え方は変わります。
私は特に、
改善の方向性と伸び率
には意味があると思っています。
コスト削減だけで一時的に数字を作るのではなく、
削減によって生まれた余力を、
次の売上へつなげている。
新しい顧客を増やしている。
利益率を改善している。
こうした状態になれば、
買い手側も、
「自分たちが引き継げば、さらに改善できるのではないか」
と考えやすくなります。
赤字から黒字になる直前の会社が、
買い手によっては魅力的に見えることがあるのも、
ここだと思います。
7.買い手が「自分なら直せる」と思える会社か
私は、
赤字会社ほど、
買い手によって価値が大きく変わる
と思っています。
ある会社から見れば、
価値がほとんどない。
でも別の会社から見れば、
非常に魅力的。
そんなことが起こり得ます。
例えば、
買い手が強い仕入網を持っている。
買い手なら原価を下げられる。
買い手には販売力がある。
買い手の商品を既存顧客へ売れる。
買い手には不足している地域や顧客基盤を持っている。
こうした組み合わせです。
私自身が赤字会社を見るのであれば、
「安く買えるか」
よりも、
「自分なら直せるか」
を考えます。
原因が分かる。
自分の経験が使える。
改善策が想像できる。
買収後の姿が見える。
そうであれば、
赤字でも価値を感じる可能性があります。
逆に、
どれだけ安くても、
なぜ赤字なのか分からない。
自分の知見も使えない。
市場の将来も見えない。
そういう会社なら、
私は慎重になります。
債務超過でも、事業価値までゼロとは限らない
会社が債務超過だからといって、
事業そのものの価値まで必ずゼロになるとは限らないと思っています。
顧客がいる。
売上がある。
長く続いた信用がある。
取引関係がある。
仕組みがある。
認知がある。
こうしたものは、
貸借対照表だけでは見えにくい部分です。
もちろん、
債務超過であることは大きな課題です。
買い手側も慎重になります。
条件交渉も簡単ではありません。
ただ、
「債務超過=会社には何も残っていない」
と最初から決める必要はないと思っています。
何が残っているのか。
どうすれば改善できるのか。
そこを見る方が大切です。
現預金と借入から「残された時間」も見る
赤字会社では、
もう一つ非常に重要なことがあります。
それが、
時間です。
赤字でも、
改善するための資金と時間が残っている会社と、
資金が尽きる直前の会社では状況が全く違います。
現預金はいくらあるのか。
毎月どのくらい資金が減っているのか。
借入の返済はどうなっているのか。
いつまで改善に取り組めるのか。
ここを見ます。
会社売却をする場合も、
資金が尽きる直前になるほど、
売り手側の選択肢は少なくなります。
だから、
赤字会社の売却を考えるのであれば、
「もう限界になってから」ではなく、時間が残っているうちに選択肢を考える
方がいいと思っています。
売る。
再生する。
経営を続ける。
どの道を選ぶにしても、
時間がある方が判断できます。
赤字会社を売るなら「赤字の説明」が必要
赤字を隠して会社を売ることはできません。
むしろ、
私はきちんと説明した方がいいと思っています。
ただ、
「赤字ですが大丈夫です」
では弱い。
必要なのは、
「なぜ赤字なのか」
「何を改善したのか」
「何がまだ残っているのか」
「買い手が入ることで、どこを改善できるのか」
まで説明することです。
原因。
施策。
数字の変化。
残っている課題。
今後の可能性。
ここまで整理されていれば、
買い手も判断しやすくなります。
赤字だから価値がないのではなく、
赤字の理由と、そこからの道筋を説明できないこと
の方が問題なのだと思います。
赤字でも売れる。ただし希望価格で売れるとは限らない
「赤字でも会社売却できますか」
と聞かれたら、
私は、
「可能性はあります」
と答えます。
ただし、
希望する価格で必ず売れるという意味ではありません。
買い手から見れば、
赤字は当然リスクです。
そのリスクを取ってでも、
なぜこの会社を買うのか。
理由が必要です。
赤字だけれど顧客がある。
赤字だけれど改善が進んでいる。
赤字だけれど認知がある。
赤字だけれど、買い手のリソースと組み合わせれば変えられる。
こうした理由があれば、
会社に価値が残っている可能性があります。
反対に、
市場そのものが縮小している。
事業モデル自体が成立しない。
改善に必要な資金や時間が大きすぎる。
そうであれば、
売却が難しいこともあるでしょう。
だから、
赤字という結果だけを見て判断しない。
私はこれが一番大切だと思っています。
赤字だから会社を売りたいのか、会社そのものを手放したいのか
そして、
赤字会社の経営者に、
私ならもう一つ聞きたいことがあります。
「赤字だから辞めたいのか。それとも、会社そのものを辞めたいのか。」
ということです。
もし明日会社が黒字になったら、
また経営したいと思うのか。
それとも、
黒字になったとしても、
もう会社経営から離れたいのか。
この二つは違います。
赤字だから一時的に苦しく、
会社から離れたくなっているのであれば、
まず原因を整理して、
改善できるか考えてみてもいい。
一方、
会社が黒字になっても、
もう経営を続けたいと思わないのであれば、
売却を考える意味は大きくなります。
会社を売るか続けるか迷っている場合は、こちらの記事でも整理しています。
▶ 会社を売るか続けるか迷った社長へ|判断する前に考えたい6つのこと
https://shacho-baikyaku.com/sell-or-continue-business/
赤字の会社に価値が残っているかを見る7つのポイント
赤字会社を見た時、
私なら少なくとも次の7つを確認します。
- なぜ赤字なのか説明できるか
- 一時的な赤字なのか、本業そのものに問題があるのか
- 売上と顧客が残っているか
- 顧客基盤や取引関係が残っているか
- 認知・信用・仕組みが残っているか
- 改善が数字として表れ始めているか
- 買い手が「自分なら直せる」と思える会社か
そして、
その土台として、
現預金や借入を確認し、
改善するための時間がどれくらい残っているのか
も見ます。
赤字とは、
あくまで結果です。
結果だけを見て、会社の価値までゼロだと決める必要はありません。
ただし、
原因を調べた結果、
市場そのものがなくなっている。
事業モデルそのものが崩れている。
再生に必要な時間や資金が大きすぎる。
そう分かれば、
それも一つの答えです。
まず原因を考える。
そのうえで、
再生するのか。
売るのか。
続けるのか。
決める。
私は、その順番がいいと思っています。
自分の会社にどんな価値が残っているのかを考える時には、こちらの記事も参考になると思います。
▶ 会社売却の目安はいくら?自分の会社の価値を見る7つのポイント
https://shacho-baikyaku.com/company-sale-value-guide/
私自身も、
業績が厳しい時期に会社をどう立て直すのか、
そして会社に何を残していくのかを考えた経験があります。
その時に学んだことはNOTEの連載にも書いています。
▶ 第52話「事業再生への道。今まで学んだことの実践」
https://note.com/shira_biji/n/nf0409de80875
赤字でも会社売却できるのか悩んでいる経営者へ
赤字だからといって、
すぐに会社を安く手放す必要はないと思います。
一方で、
「赤字でも必ず高く売れる」
と期待しすぎるのも違います。
まず、
自分の会社に何が残っているのか。
なぜ赤字なのか。
改善できるのか。
誰ならこの会社に価値を感じるのか。
そこを整理する。
そのうえで、
売却する。
再生する。
経営を続ける。
選べばいいと思います。
会社売却を考え始めた頃、私自身も分からないことがたくさんありました。
そこで実際に会社を売却した経験から、
「会社を売ろうと思った社長へ。売却前に私が知っておきたかった7つのこと」
を無料音声にまとめています。
売却を勧めるための内容ではありません。
売るのか。
続けるのか。
もう少し会社価値を高めるのか。
まだ答えを決めていない社長の方に、一つの経験談として聞いていただければと思っています。
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