会社を売る相場はどう決まる?利益の何倍だけでは決まらない6つの理由

売却価格・条件交渉

会社を売ろうと思った時、

多くの経営者が気になるのが、

「自分の会社はいくらくらいが相場なのか」

ということだと思います。

利益の何倍なのか。

売上の何倍なのか。

純資産はいくらなのか。

会社価値を計算する方法はいくつもあります。

私自身も、会社を売却する時には当然考えました。

ただ、実際に会社売却を経験した今でも、

会社に絶対的な相場があるとは思っていません。

もちろん、一般的な目安はあります。

会社価値を計算する方法もあります。

でも、最終的な価格を決めるのは計算式だけではありません。

私は、

「その会社を、その金額でも欲しい」と思う買い手がいるかどうか

が非常に大きいと思っています。

今回は、会社売却の相場が「利益の何倍」だけでは決まらないと私が考える6つの理由を書きます。

1.同じ売上・同じ利益でも会社価値は同じではない

仮に、

売上も同じ。

利益も同じ。

純資産も近い。

そんな会社が2社あったとしても、必ず同じ価格になるとは思いません。

例えば、一方には、

市場での認知がある。

継続顧客がいる。

取引先との関係がある。

販売の仕組みがある。

もう一方には、それがほとんどない。

決算書だけを見れば似ていても、買い手から見れば全く違う会社に見えることがあります。

なぜなら、

会社を買うということは、今の利益だけを買うことではない

からです。

顧客。

信用。

認知。

人材。

仕組み。

取引関係。

将来性。

こうした数字に表れにくいものも一緒に買うことになります。

だから私は、

「利益が同じだから、会社価値も同じ」

とは考えていません。

2.会社価値は「誰が買うか」で変わる

会社売却で非常に重要だと思うのが、

同じ会社でも、買い手によって価値が変わる

ということです。

例えば、ある会社が販売網を持っているとします。

すでに同じ販売網を持っている買い手からすれば、それほど大きな価値を感じないかもしれません。

しかし、その販売網を持っていない会社からすれば、

一から作る時間を大幅に短縮できます。

顧客基盤も同じです。

技術も同じです。

地域での信用も同じです。

ある買い手にはそれほど必要がないものでも、別の買い手には非常に価値がある。

だから、

A社にとっての会社価値と、B社にとっての会社価値は同じではありません。

「会社の相場はいくらですか」

と聞かれた時に、

私ならまず、

「誰が買うのかによって変わる」

と考えます。

3.買い手とのシナジーで価格の見え方は変わる

買い手が会社を買う理由は、

単純に現在の利益を受け取るためだけとは限りません。

自社の商品を、新しい顧客へ販売できる。

新しい地域へ進出できる。

新しい技術を手に入れられる。

既存事業と組み合わせて売上を伸ばせる。

仕入条件を改善できる。

こうしたシナジーが考えられる場合があります。

ここで私は、

シナジーを買い手任せにしない方がいい

と思っています。

売り手側から、

「御社がこの会社を買えば、こういう展開が考えられます」

「この顧客基盤と御社の商品を組み合わせれば、こういう可能性があります」

と説明する。

実際に買い手がその通りに実行するかどうかは分かりません。

でも、

「この会社を買う意味」

を売り手自身が考えて提示することはできます。

会社売却も、私はある意味で営業に近いと思っています。

単に、

「売上はいくらです」

「利益はいくらです」

と説明するだけではなく、

「この会社を買うことで、御社にはこんな未来があります」

まで伝える。

買い手にとっての価値が大きくなれば、会社の価格の見え方も変わる可能性があります。

4.売却する時期によっても相場は変わる

会社そのものが同じでも、

売却する時期が違えば、評価が変わることがあります。

業界の状況。

競合環境。

景気。

金利。

買い手企業の経営状況。

M&Aへの投資姿勢。

こうしたものは常に変わります。

ある時期には積極的に会社を買っていた企業が、

翌年には買収を止めることもあります。

反対に、

新しい事業へ進出するために、突然ある業界の会社を探し始めることもあります。

だから私は、

今提示された査定額が、その会社の永久的な価値だとは思っていません。

会社価値は動きます。

会社自身が成長することでも変わりますし、

会社を取り巻く環境が変わることでも動きます。

つまり、

「いつ売るのか」も会社売却価格の一部

だと思っています。

5.複数の選択肢があるかどうかでも交渉は変わる

会社を欲しいと言っている買い手が1社しかいない場合と、

複数の買い手が関心を持っている場合では、

売り手側の立場は変わります。

私は、

必ず何社も競わせればいい、

という意味ではないと思っています。

大切なのは、

「この買い手しかいない」という状態にしないこと

です。

この相手に売るしかない。

この価格を受け入れるしかない。

こうなると、どうしても売り手側の選択肢は少なくなります。

一方で、

他にも相談できる相手がいる。

条件が合わなければ売らない。

経営を続けるという選択もできる。

そういう状態であれば、交渉にも余裕が生まれます。

会社売却では、

価格そのものだけではなく、売り手側にどれだけ選択肢があるのか

も重要だと感じました。

6.「売らなくてもいい会社」は交渉で強い

私は、会社売却で強いのは、

売らなくても経営を続けられる会社

だと思っています。

資金繰りが厳しい。

急いで売却しなければならない。

何としてでも買い手を見つけなければならない。

そうなると、

「条件が合わないので売りません」

と言いにくくなります。

反対に、

売らなくても経営できる。

利益を出せる。

もう一度会社を伸ばすこともできる。

そういう状態なら、

納得できない条件を断ることができます。

私自身も、会社売却を進める時には、

自分なりに「この条件を下回るのであれば売らない」という線を持っていました。

売却すること自体が目的ではなかったからです。

条件が合わなければ、そのまま経営を続ける。

そういう選択肢を持っていました。

私はこれが、価格交渉では非常に大きいと思っています。

「利益の何倍」は参考になる。でも答えではない

会社売却では、

利益倍率。

純資産。

DCF。

類似会社との比較。

いろいろな方法で会社価値を考えます。

こうした方法を否定するつもりはありません。

むしろ、

会社価値を考える最初の基準として非常に重要

だと思っています。

ただ、

「この業界なら利益の何倍」

「この規模ならこのくらい」

という数字だけで、

自分の会社の最終価格が完全に決まるとは思っていません。

相場は、

あくまで参考です。

相場とは、誰かが過去に交渉した結果であって、自分の会社の答えではありません。

自分の会社には、

他社にはない顧客がいるかもしれません。

他社にはない認知があるかもしれません。

買い手にとって非常に魅力的な仕組みがあるかもしれません。

だから私は、

相場を知ることと、相場に自分の会社を合わせることは別

だと思っています。

買い手の「競合」まで考えると会社価値の見え方は変わる

買い手からすると、

「この会社を自社が買った場合どうなるか」

だけが判断材料ではないと思います。

「自分たちが買わなかった場合、この会社は誰に買われるのか」

という視点もあります。

もし競合会社が買えば、

それまで存在しなかった強い競争相手が生まれるかもしれません。

顧客基盤。

販売網。

技術。

ブランド。

こうしたものが競合へ渡る可能性もあります。

会社売却では、

「この会社を買うメリット」だけでなく、

「競合に買われた場合の影響」

も、買い手によっては価値判断に影響する可能性があります。

これも、

会社価値が単純な計算式だけでは決まらない理由の一つだと思っています。

売り手自身も「この会社を買う理由」を説明する

私は会社売却を、

自分の会社という一つの商品を売ることだと考えていました。

もちろん、

会社を単純な商品と同じように扱えるわけではありません。

でも、考え方としては似ています。

「良い会社です」

と言うだけでは伝わりません。

相手にとって、

何が良いのか。

なぜ必要なのか。

買った後に何ができるのか。

そこを説明する必要があります。

だから、

会社を売るのであれば、

売り手自身も、自分の会社を営業する

くらいの気持ちがあっていいと思っています。

買い手に、

「価値を見つけてください」

と任せるのではなく、

こちらから、

「この会社を買う意味はここです」

と伝える。

これは私自身、非常に重要だと思っています。

相場を調べるより「欲しいと思わせる理由」を考える

もし今、

「自分の会社はいくらが相場なのだろう」

と調べているのであれば、

もちろん相場を知ることは大切です。

自社の目安を知っておく必要もあります。

ただ、それと同じくらい考えてほしいことがあります。

「なぜ、買い手はこの会社を欲しいと思うのか」

です。

この会社を買えば、

何年分の時間を短縮できるのか。

どんな顧客と接点を持てるのか。

どんな信用を得られるのか。

どんな仕組みを手に入れられるのか。

どんな成長が考えられるのか。

その理由を、

買い手だけに考えてもらうのではなく、

売り手自身も考える。

会社を高く売りたいのであれば、

私は、

相場を調べるだけではなく、「この会社を欲しい」と思わせる理由を会社の中に作ること

の方が大切だと思っています。

自分の会社価値を考える時はこちらも参考にしてください

今回の記事では、

「なぜ会社売却の相場は固定ではないのか」

という話をしました。

一方、

自分の会社価値を見る時に、

具体的に何を確認すればいいのかについては、こちらの記事にまとめています。

▶ 会社売却の目安はいくら?自分の会社の価値を見る7つのポイント
https://shacho-baikyaku.com/company-sale-value-guide/

私自身も、

こうした考え方を持ちながら実際に会社売却へ動き始めました。

しかし、

自分が「この会社には価値がある」と考えていても、

買い手が同じように評価してくれるとは限りません。

どんな相手が現れるのか。

どこに価値を感じてもらえるのか。

自分が考えている条件で本当に話が進むのか。

実際に動いてみなければ分からないこともたくさんありました。

その頃のことはNOTEの連載でも書いています。

▶ 第44話「いよいよ売却に向けて動く」
https://note.com/shira_biji/n/n77c4b739f923

会社を売る相場が気になっている社長へ

会社売却を考え始めれば、

「いくらで売れるのか」

「利益の何倍なのか」

が気になるのは当然だと思います。

ただ、

実際に会社を売却した私が今考えるのは、

会社には定価がない

ということです。

誰が買うのか。

なぜ欲しいのか。

どんなシナジーがあるのか。

いつ売るのか。

他に選択肢があるのか。

そして、

売り手自身がどこまで売却を急いでいるのか。

こうした条件によっても、最終的な価格は変わります。

だから私は、

相場とは一つの参考資料であって、自分の会社の最終回答ではない

と思っています。

会社売却を考え始めた頃、私自身も分からないことがたくさんありました。

そこで実際に会社を売却した経験から、

「会社を売ろうと思った社長へ。売却前に私が知っておきたかった7つのこと」

を無料音声にまとめています。

売却を勧めるための内容ではありません。

売るのか。
続けるのか。
もう少し会社価値を高めるのか。

まだ答えを決めていない社長の方に、一つの経験談として聞いていただければと思っています。

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